医療保険に加入する際、健康保険の仕組みやもらえる金額は調べる方は多いのですが、健康保険制度が今後どうなるのか考えたうえで、加入する方はほとんどいません。
また終身医療保険を勧める方もキチンとした認識をもっているかは疑問です。
例えば、20歳そこそこの新入社員に対して、「若いうちに終身医療保険に入れば保険料も安いし、一生涯安心ですよ!」というセールストークに私はものすごい違和感を覚えます。
ということで、今回は今後の健康保険制度について私の考えをお話します。
40年前は高齢者の医療費は無料だった!
いま、高齢者の自己負担割合は1〜2割ですが、40年前はなんと無料!でした。
これは高齢者の人数が少なかった当時だからできたことであり、高齢化が進んだ今では絶対に不可能です。
また、サラリーマンの方も、もともとは定額(低額)負担でしたが、1割負担になり、2割負担になり、20年前に3割負担へと引き上げとなりました。
負担が引き上がる背景には、高齢化の進展とともに、医療の高度化・高額化があります。
昔だったら何も治療できず亡くなっていた方も、医療の高度化で治療が可能となった分、多額の医療費も必要となったということです。
助かる命が増えたことは幸せかもしれませんが、これと引き換えに負担増を受け入れる必要があったということです。
昭和36年に国民皆保険制度が誕生してから約60年。
その間、自己負担の割合も大きく変わってきました。
こうした歴史をみると、50年後、60年後の健康保険制度は、今とは全く変わった姿になっているかもしれません。
少なくとも今より良くなることは100%ありえません。
ですから、今の健康保険制度を前提に、一生安心というのはありえないということです。
だからこそ、医療保険は掛け捨てが一番。医療のための貯金を意識しましょう。
以前、「社会保障制度に関するシンポジウム」を聞きに行ったことがあるのですが、その際パネリストの1人から「窓口負担が4割になったら保険とは言えない」という意見がありました。
私も3割は窓口負担としては限界だと思っています。
一方で、社会保険料負担・税負担も限界にきているという声も高まっています。
そうなったとき、現役世代の3割負担は変わらないと思いますが、現在1〜2割負担の高齢者の医療費は、今後、3割負担に引き上がることは間違いないでしょう。
また、現役世代の3割負担については、この20年間変わっていませんが、1ヶ月の医療費が高額となった時の負担上限額(高額療養費制度)については数年に1回見直されています。
私が社会保険労務士の資格を取得した20年前は、高収入の方も・一般的な収入の方も毎月の医療費の支払限度額は63,600円でした。
いまは、一般的な収入の方であれば、月10万円前後、高収入の方であれば月25万円前後と大幅に引き上がっています。
今後も収入に応じて、負担額が増えることになると思いますが、どれだけ負担が増えるのかは不明です。
ですから、若いうちに終身医療保険に入れば安心ということはありえません。
私たちができる自己防衛策は、短期的には安価な掛け捨ての保険に入り、浮いた保険料も含めて、できるだけ早くまとまった貯金を作るしかないんです。
少し面倒かもしれませんが、定期的に保険の内容を見直すことで、無駄な保険料を払わないことが重要となってくるのです。